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桐生祇園 "鉾"の各部分の紹介

人 形




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三層構造の鉾の最上部の人形は、素戔鳴命(すさのおのみこと)である。眼光鋭く、歌舞伎の大見得(おおみえ)の様に見える。神話の大蛇退治の場面で、鎌首を持ち上げ、大きく口を開き赤い舌を出す大蛇に、まさに太刀を振り降ろさんとする命。浅草の人形師松本喜三郎(1825〜1891)の作品で、喜三郎50才の時のもの。熊本で生まれ、大阪から江戸に出て、新門辰五郎のもとで評判をとった。東高(今の東大医学部)の依頼で、人体模型を製作するほどで、解剖学的正確さとリアルで人間味を加味させ、命を与えた人形師だった。

 「四丁目鉾」は、関東地方では無類の大きさと、独創性に富んだ重層式桐生型と云える鉾です。四方幕(水引き)で囲み、三味線胴と人形が迫り上がると全高9.2メートルにもなる。

露 台

三味線胴




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鉾には、台輪(土台)から垂直に、一本の角柱が立ってます。一層目の屋根を貫通したその角柱が支柱となって、勾欄の付いた露台を支えます。露台から吊した四方幕で囲い、露台の上に人形が乗る形式になっております。 
この形式は、文化文政期から明治に懸けて、関東南部を中心に造られた屋台に多く見られます。一本柱を利用した形式の屋台として、唐破風造りの屋根に穴を開け、四輪の土台に立てた柱をこの屋根の穴に通して、一本柱を立てる。そして、柱の先端に露台を設け、露台の下は全て幕で覆い、鉾台風のつくりとし、露台上には人形などを乗せる、という屋台と山車の折衷型の曳きものが、幕末から明治に掛けて、今の八王子や埼玉南部地域を中心に造られていました。露台上部の四方彫刻の部分を "三味線胴" と呼びます。

一本柱




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 四丁目鉾の後部の下座の真ん中に立つ一尺角の樫の柱。

 青梅や所沢に、露台を持った屋台が現存してます。
 画像は、八王子で造られた所沢市御幸町の山車です。露台を付けた屋台(当地では、山車と呼ぶ)四方幕が無いことと、露台(当地では盛留めと呼ぶ)の取り付け取り外しは、柱を後方へ倒す仕様です。屋台の屋根上に露台を掲げる桐生型の鉾にも共通性を感じます。

向拝柱
ごはい
ばしら




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 鉾の正面の破風屋根を支える正面左右の二本柱のうちの一本。これは、向かって右側の柱で、柱に巻き付いた龍が上に向かって昇る様を繊細な彫刻で仕上げております。反対側の柱は、下に頭を向けた龍が巻き付いた柱で、右側の柱と同様な見事な彫刻で仕上がってます。まるで、龍そのものが柱になっておる様に見えます。

 関東随一の大きさを誇る鉾だけあって、鉾の各部を飾る破風、虹梁、欄間などの彫刻類も本体の大きさにふさわしく、龍や唐獅子の彫刻は形も大きく、いまにも跳びかかって来るかのような立体感と迫力のある仕上がりになってます。

 ですが、この向拝柱の龍は、浅い彫りで、柱が龍に化身したかの感があります。
 鉾全体が大きいのに、鉾の正面の破風を支える二本の柱が細く、スリムに仕上げた彫り師の芸術感に敬意を表します。

 品格を備えた背丈の高いこの四丁目の鉾は、美形の貴婦人の姿を彷彿させます。向拝柱は、すんなりと品よく伸びた貴婦人の二本の脚です。立体感のある幾筋もの龍の長いひげが、柱の細さを印象づけております。鉾全体を品格の高さは、この二本の柱で決定づけている、と云っても過言ではないと、思います。

虹 梁
こうりょう




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虹梁「こうりょう」とは梁、つまり柱と柱の上部を横に渡す材のことをいいます。虹梁の名称は虹のように反った梁から付けられました。

 四丁目鉾の破風の梁は、二段になってます。下の大きい梁は3匹の龍の彫刻、上の梁から大きな龍が下の梁に身を乗り出す形で、顔を突き出して、正面中央を睨んでおります。

破 風




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 唐破風の左右両端と、破風上の鬼板と破風下の懸魚に各一匹の、計四匹の龍の彫刻です。素木(白木)のままですから、陰影がないと彫りの輪郭が鮮明でなく、見づらいのをお詫びします。

脇障子




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 廊下の突き当たりの障壁を脇障子と呼びます。この鉾は、前部及び両側面の後ろ一杯迄を勾欄として、屋台の背中には勾欄が無く、脇障子が屋台の背中と並ぶ位置にあり、この様式は、江戸時代後期の江戸型屋台の様式と同じです。
背丈の高い脇障子を鉾の背部にした桐生鉾は、外観の調和からみると、ベスト位置です。彫刻は下部の龍と上部の唐獅子です。

舞台欄間




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舞台と下座の仕切の襖の上の欄間や鴨居には、飛翔する鶴、波間に羽根を休める鶴など、大小さまざまの彫刻で埋められている。

下 座の
外欄間




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舞台の後ろの下座は屋根が高く、その分、側面は欄間を挟んで二段の格子の窓になってます。欄間は唐獅子とリス、ブドウや牡丹などの見事な彫刻で埋まってます。

心 棒




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鉾の方向転換を行う時は、梃子棒(てこぼう)で鉾の車輪を持ち上げてから、台座(土台)から 10センチ角の樫材の心棒を降ろし、梃子棒を外して、浮いた状態になった鉾を、心棒を中心にして回転させて、鉾の向きを変える。これと同じものが、屋台にも装置されております。
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